ルミナ4月号のペダリング特集を読んで思ったこと

トライアスロン解体新書 運営日誌

発売から10日ほど経ちましたがトライアスロンルミナ4月号を購入しました。

今月の目玉は何といっても付録のレースカレンダーでしょう。今どきネットでも手軽に大会を調べることができるので昔ほどレースカレンダーの意義は無くなって来ているような気もしますが、「冊子のレースカレンダーが欲しい!」という人もそれなりにいらっしゃるのではないでしょうか?

ただ、そのおかげで1,400円といつもより値段は高いです。

ちなみに今シーズンの参加大会がすでに決まっている僕にとっては、正直なところレースカレンダーはどっちでもよい付録でした。今回購入したのはレースカレンダーではなくペダリングに関する特集がお目当てです。

ペダリングの特集の概要

Body Control Lab.という何ともわかりにくい名前の特集ですが、内容を簡単に書くと

  • 解剖学的なペダリングの話
  • トリガーポイントや筋膜リリースの概要とセルフケアの方法
  • 良い動きを身につけるためのドリルの紹介
  • ARTという施術法の宣伝

という感じでした。

トリガーポイントと筋膜リリース関係の話は、ARTの宣伝のために都合のよいことだけを書いているような気もしますが、雑誌のタイアップ記事なのでこんなものでしょう(笑)

でも、セルフケアの内容などは良い内容です。ストレッチぐらいしかセルフケアの方法を知らない人は読んで置いて損はないと思います。トリガーポイントのセルフケアについてもっとマニアックに知りたい人はこの本が一押し。正直なところ文字ばかりで読むのが大変ですがとても勉強になりますよ。

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ペダリング解剖学で気になった点ー2関節筋について

特集の最初は解剖学的な知見を踏まえたペダリングの解説をしてくれています。

「股関節の曲げ伸ばしを意識する」という点は本当にその通りだと感じました。

また、ペダリングでは下死点から上死点までの動きがポイントになってきますが、「太腿を引き上げてくる動作で腸骨筋ではなく大腿直筋を使ってしまっている」という指摘はとても的を得ています。

さらに筋収縮のパターン(どの筋肉を使うか)を変えることが大切など、頑張って踏んでるのにスピードが出ないと悩んでいる人は一読の価値があると思います。

すごく良い内容が多かったのですが、単関節筋を使う方が効率がよいとか、ハムストリングが硬いから上死点が低くなるとかいう話は「ホントに??」と感じたのでちょっと書いてみたいと思います。

記事の中で

これに対して大腿四頭筋・ハムストリングスなどの大腿筋を使う動きが疲れやすく、非効率なのは、コンセントリック収縮とエキセントリック収縮の両方が起きるからだと福田さんは言う。その理由はこれらの筋肉がふたつの関節をまたぐ二関節筋だということにある。

という説明がされています。専門的な用語がいくつか出ているので簡単に書いておきますね。

筋肉の力の出し方は下記の様に3通りに分ける事ができます。筋トレなどではよく出てくる用語なのでアスリートなら知っておいて損は無いかと思います。

  • エキセントリック収縮
    筋肉が伸ばされながら力を出すこと。動きにブレーキをかけるイメージ
  • コンセントリック収縮
    筋肉が縮みながら力を出すこと。動きを加速させるイメージ
  • アイソメトリック収縮
    筋肉の長さが変わらずに力を出すこと。いわゆる力むイメージ

筋肉は関節をまたいで骨と骨をつないでいます。そのときに1つの関節だけをまたぐ筋肉を単関節筋。2つの関節をまたぐ筋肉を2関節筋とよびます。指を動かす筋肉などはもっと沢山の関節をまたいでおり多関節筋と呼ばれたりします。

話は戻って、多関節筋はエキセントリック収縮が起こるので筋肉にダメージを与えやすいという話は確かだと思いますが、こんなふうに書かれると2関節筋ってダメなヤツという印象を持ってしまう人もいるかもしれません。

でも実際には体幹で生んだ力を末端に伝えるときに2関節筋というのはとても大切な働きをします。そのメカニズムは複雑で簡単に説明できないのですが、人や動物が少ない力でダイナミックな動きをするためには必要不可欠なものです。

純粋に力だけを追求するなら単関節筋重視でも良いかもしれませんが、スポーツは少ない筋力で速く大きな動きができる方が有利になる場合がほとんどです。そこでキーとなるのは体幹で発生した力を末端に連動して伝える2関節筋の頑張りです。そこは誤解しないようにしてほしいですね。

余談ですが、下記のリンクはロボット工学の話です。2関節筋の考え方を使うと関節の制御に必要な計算量が大幅に減るそうです。

http://www.mathforum.jp/sentan/01biomecha/intro.html

人で言えば神経系の負担が減る、少ない意識で滑らかに動けるということに繋がるんじゃないかなと思います。

ペダリング解剖学で気になった点ーハムストリングの固さ

特集ではハムストリングが硬いことが影響して上死点が低くなるという話が書いてあります。

上死点での関節の角度は深くしゃがんだ状態に近いと思うのですが、足首が固くてしゃがめない人は沢山見てきましたが、ハムストリングが固くてしゃがめない人は見たことがありません(もちろん痛みがある人は別)。

上死点では膝が大きく曲がっているのでハムストリングはかなり緩みますから上死点での動きを妨げるとはちょっと考えにくいです。

上死点の高さが低くなってしまう原因は筋収縮パターンが悪いからなだけだと思います。個人的には下死点あたりでの脱力のタイミングが合うと太ももが楽に上がってくる感覚があります。

ではハムストリングは固くても良いかというと、僕は下死点で膝が伸びるときに影響がでると思います。

例えば椅子に座った状態でヒザを伸ばしてみてください。膝〜ももの裏が張って膝をピシと伸ばすのが難しい人がほとんどだと思います。

バイクに乗った状態では股関節がもうすこし伸展するので、椅子に座っているときよりは楽に伸ばすことができます。

しかし前屈でまったく床に手が届かないぐらいハムストリングが固いとサドルの高さによっては影響がでてきます。具体的には下死点で脚の長さが足らず、それを補うために骨盤を傾けるという余計な動作が入り動きにムダがでます。かといって、それを補うためにサドルを下げると上死点で窮屈になりスムーズにペダリングができません。

まぁ、どちらの話が正しいにせよ、ハムストリングの柔軟性はトライアスリートにとって大切なことに変わりはないのでストレッチはしっかりやりましょう。

お尻がやっぱり大切

すこし批判的なことも書きましたが、冒頭でも書いたように基本的にとても良い内容の記事だと思います。

殿筋(お尻の筋肉)が使えることの大切さを強調している点は本当にそのとおりで、整体の患者さんでランナーの方を見ていても、殿筋が立派な人は速いですし、殿筋が少なく太ももやふくらはぎが立派な人で速い人はめったに見かけません。

殿筋を上手く使える=股関節や体幹をうまく使える人だと思うので、どんな種目でもパフォーマンスが高くなるのではないかと予想しています。

記事でも書かれていますが、殿筋を使えるかどうかは股関節の動きをイメージできるかどうかにかかっていると思います。殿筋を使えるようにするために掲載されているドリルは理に適っているものなので、お尻が使えない!と思う人には是非取り組んでもらいたいですね。

股関節から動かす感覚が分かると色々と変わってくると思いますよ。

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