ここでは効果的なストレッチについて書いていきます。
ストレッチは意味が無い?
「運動前に体をよく伸ばす」といのは多くの人が常識と考えています。
あなたもそうではないですか?
ところが「運動時のパフォーマンスアップやケガの防止にストレッチが役に立つ」ということに対する科学的・統計的証拠は見つかっていないのです!
確かに“適切な”ストレッチをすることによって、関節の可動域(ROM)は広がりますが、
ROMが広い=ケガをしにくい
と単純に考えてはダメなわけです。
実際、柔軟性の大小と障害を関連づける疫学的証拠は非常に乏しいというのが現実です。逆に柔軟性が増えると障害が増えることを裏付ける研究結果もあるほど。これは僕の知る限りでは1990年代から言われていることです。
僕がこのことを初めて知ったのはトライアスロン界で有名なマフェトン理論。その中でマフェトン博士は
「持久系の運動の場合、適切なウォーミングアップとアクティブリカバリーをすればストレッチングは必要ない」
としています。ただし、ダンス、短距離走、跳躍などの大きな関節の可動域を要する運動ではストレッチングは効果があるだろうとも言っています。
では、トライアスロンをやるならストレッチは必要ないのでしょうか?
ストレッチをすると筋肉はどうなる?
ストレッチというのは筋肉を伸ばす行為ですね。筋肉が伸ばされたときに起こる反応は伸ばされ方によって2つに分けられます。
勢いよく伸ばされた場合
これは昔ながらのストレッチですね。勢いをつけて体をまげるやつです。筋肉は急激に伸ばされると「切れたらまずい!」と判断し、収縮して守ろうとします。伸展反射というのですが、シートベルトをイメージして下さい。シートベルトを急に引っぱるとロックしますよね?これと同じ事が筋肉にも起こります。ですので、これは体を柔らかくするどころか反対に筋肉を緊張させ体を固くさせてしまいます。
ゆっくり伸ばされた場合
最近普及しているストレッチはこれですね。ゆっくりリラックスしながら息を止めずに伸ばします。こうすると伸展反射がおこらず筋肉はよく伸ばされます。柔軟性をアップさせるにはちょうどよいです。しかし・・・筋肉は伸ばされすぎると筋力が低下してしまうことがわかっています。これがこれから運動するのにふさわしい状態かというとそうではないですよね。
この筋肉の性質を考えるとストレッチをどういう時にするべきかわかってきます。
練習前のストレッチ
ストレッチ後の筋肉の性質から考えると、運動前にはストレッチは入念にしない方がよいということがわかります。特に勢いをつけてやるのは論外ですので絶対にやらないで下さい。
ただし、縮みすぎで固まった筋肉も力を出せません。
肉離れを起こした場所や、デスクワークなどで普段一定の長さで動かさない事が多い筋肉は働きが悪くなっています。こういう筋肉は適度なストレッチをした方がよく働くようにになります。
整体の現場では実際にストレッチを指導することで痛みやコリを解消する患者さんも沢山いらっしゃいます。縮んで固まっているところは伸ばす必要があるんですね。
以上のことを考えると、運動前は動きが悪いと感じる部分に対して、「気持ちよく感じるレベルのストレッチ」をするのがベストでしょう。動きが悪いところをほぐすようなイメージですね。
練習後のストレッチ
練習直後の筋肉は多かれ少なかれダメージを受けて炎症を起こしています。痛んだ組織を無理に伸ばすことは避けた方がベターです。ゆっくりクールダウンして落ち着いてから、固くなっている筋肉をストレッチしてあげましょう。
このときも可動域を広げようと頑張ってはダメです。本来の長さに戻す(疲労した筋肉は縮み気味になっている)イメージで気持ちよい範囲で行えば十分です。
ちなみに柔軟性アップのための入念なストレッチは夜寝る前などリラックスしたときにやるのが安全です。お風呂に上がりなど筋肉の温度が上がっている状態でやるとケガの心配も少なくなります。
また、練習がない日も寝る前に一日の生活で固まってしまった筋肉はストレッチしておくとケガをしにくくなります。
これは整体師としていろいろな人を診てきた経験上いえることです。科学的根拠はありません・・・。
ただし、伸ばしてい気持ちよくない部分は伸ばしていはいけません。そういう部分は普段の生活で伸ばされすぎなので縮めてあげましょう。
まとめ
「何でも伸ばせばよい」といえるほど単純ではないことがわかったでしょうか?
ストレッチ自体は
- 気持ちよさを感じるレベル
- 勢いをつけない
- 伸ばして気持ちよいところだけやる
という点を間違えなければ効果的な体操だと思います。
特に伸ばして気持ちよいところだけというのがミソです。これはあなた自身が自分の体と対話して感じてください。自分の体に注意を払うことがアスリートにとってとても大切な習慣ですからね。
最後に参考になる本をいくつか挙げておきす。ちなみにストレッチ本にはいいことしか書いてませんので(苦笑)「この記事と違うことが書いてある!」なんて突っ込まないでくださいね。
トライアスリート向けのトレーニング本。常識を覆すような内容が豊富で僕も影響を受けてます。もう古本しかないようです。
痛みの改善に軸足を置いたストレッチ本ですが、日常の気をつける姿勢の話やトリガーポイントの話など体のケアに役立つ内容が豊富です。
スポーツ向けのストレッチ本。種目別・部位別に上手くまとまっています。