そういう場合、頭の中にある体のイメージ(ボディマップ)と現実の体が一致していないことが多いです。すこし難しい概念ですがケガ無く上達するためには必ず気づいて欲しい概念です。ということで、ここではまずボディマップの概要について説明していきます。
人は頭の中に地図を持っている?
あなたはボディマップという言葉をご存じですか?
一言で書くと「あなたの脳の中にある体のイメージ」です。
私たちは自分のからだの大きさ(手足の長さなど)や、関節がどこで曲がるのか、どのように動くのか、どれぐらいの速さで動かせるのか?といった体の構造に関する情報を頭の中に持っています。だから目をつぶっていても自分の体の場所を正確に触ることがでるわけです。
これを「脳の中にはからだの地図がある!」と比喩してボディマップと呼び、米・オハイオ州立大学音楽学部で教えているウィリアム・コナブル教授が提唱したものです。コナブル教授は演奏中の生徒の動きを観察する中で、彼らのからだの動きはからだの実際の構造に従ったものではなく,「自分のからだの構造はこうなっている」というその生徒自身の「思い込み」に従っているということを発見したそうです。
「思い込み」ですから、この地図は生まれながらに持っているものではなく、成長の過程で徐々に作られていきます。そして、現在のからだの状態に合わせて常にアップデートされていくべきものです。ここで「べき」と書いたのはアップデートされないことがよくあるからです。
例えば学生時代はバリバリとテニスやり、その後パタリとやめた人が10年ぶりぐらいにテニスをしたら…
「あれ、体がついてこない…」
ということはよくある話だと思います(笑)。
このギャップは筋力も柔軟性も衰えているのに、脳内のボディマップは昔のままアップデートされてないことが原因で起こる現象です。
この場合は加齢とトレーニング不足による不一致なのでそれほど深刻ではありません。なぜかというと、ある程度は努力しだいで機能を戻すことが可能ですし、逆に少しやれば今できる範囲が分かってくる=ボディマップの修正がしやすいからです。
修正されにくいボディマップ
ところが、
- 腕がどこから生えている?
- 腰がどれぐらい捻れるのか?
- 股関節の位置は?
という体の物理的構造とボディマップのズレは深刻です。これは適切な知識や指導が無いとなかなか気づくことができません。
さらに悪いことに、間違ったボディマップで頑張るとマップが修正されるかわりに関節や筋肉に余計な負担がかかり、頑張っているけどなぜか成績が上がらない、すぐにケガをするという原因になります。
「腕がどこから生えているかだって?そんなこと分かってるよ、バカらしい!」
と思ったあなたは恐らくヤバイです(笑)お医者さんなど解剖学を勉強した人でない限りほとんどの場合間違っています。人の体はガンダムのような関節構造ではないですからね!
ボディマップを磨くとどうなる?
多くのアスリートを見ていると
「それほど練習してないのに何故か速い人、頑張ってるのに速くならない人」
がいることに気づきます。これは何故でしょうか?
その答えの一つにボディマップが関係しているように感じています。
いわゆるセンス・素質があるといわれる人は、もともとこのボディマップの精度が高いので、同じ動きをしているはずなのに大きな動きをしているように見えたり、パフォーマンスが高くなるのではないかと。
昔、藤原選手が雑誌の連載で「体の構造通りに動けることを目指している」と書いてらっしゃいましたが、これは言い換えると正しいボディマップを作っていくと言い換えることができます。
長々と書いてきましたが、要は正しいボディマップを手に入れれば、パフォーマンスアップは上がるしケガもしにくくなるという一石二鳥の効果が得られるわけです。
最近は筋肉だけでなく筋膜のことまで言及する雑誌やトレーニング本も増えてきました。その次に来るのはボディマップじゃないかと勝手に思ってます(笑)
ということで、このサイトではこのボディマップを少しでも正しいものに修正する手がかりをご紹介していこうと思います。
特に多くの人は関節の位置と構造について勘違い(というか知らない?)している場合が多いのでその辺を詳しく書いていくつもりです。