「腰は捻れないって、そんなわけないでしょ!」
と突っ込みたくなるかもしれませんが、本当に腰は捻れません。ここを間違っていると腰を痛める原因にもなります。
ここでは腰の動きについて詳しくみていきます。
胴体は箱ではない!で書きましたが、楕円胴体では腰の部分に分割線がありません。胸と腹と骨盤部分がすべて一体化しています。
なぜこのような図になったかというと、この記事のタイトルのように腰は(ほとんど)捻れないからです。肋骨から骨盤までを一つのユニットとして見るべきだという意味がこもっています。
とはいえ、おそらくほとんどの人は、腰・胴体をねじる時、下の写真の人形のようなイメージ(ボディマップ)を持っていると思います。
実際、骨格の写真をみても骨盤の上に棒のように伸びている背骨を見れば、そこを軸に捻れそうに感じます。
では、実際には腰はどれだけ捻れるのでしょうか?
腰の構造を知ろう
ちなみにここでいう腰とは骨盤と上半身を連結している背骨の下の部分(腰椎)のことです。
まずは現状確認。
立って後ろに振り返る動作をやってみてください。
90度ぐらいは回転してくれそうですね。
しかし、実際には腰痛の回旋角度は左右各5°ずつと言われています。
腰椎の関節は全部で6個あるので、5°×6個=30°。
つまり腰は左右各30°しか捻れないのです。
それは腰椎の形をみればわかります。
腰椎の関節は下の腰椎が上の腰椎を左右からくわえ込むような形状になっているのがわかると思います。つまり、腰は前後・左右にはよく動くのですが、回転する方向には骨同士が当たって動かないようになってるんですね。
なぜ胴体は捻れる?
さて解剖学的な構造は理解しても現実を見ると、
「どう考えても30°以上胴体は捻れてるぞ!」
と言いたくなると思います。それはなぜか?
その答えは肩甲骨と股関節です。
この2つの関節が胴体の捻れという感覚の大半を作り出してるのです。
肩甲骨は主に腕の位置にかかわり、胴体(体幹部)の向きを変える役割はほとんど股関節が担っていると考えられます。
股関節はボールがソケットにはまり込んだような構造で非常に可動域が大きい関節です。この関節が動くことで骨盤ごと胴体は捻れている(ように見える)わけですね。
また、肩甲骨は肋骨の上に浮かんでおり、肋骨の上を自由に移動することができます。ここが柔軟に動くことで、胸から腕にかけて捻れている感覚につながります。
おそらく今、あなたはイスに座っていると思うので、そのまま限界まで右に振り向いてみてください。
そうすると左のお尻を軸にして骨盤も一緒に右に回転しているはず。そして、右の肩甲骨もいけるところまで背中側に引きつけているはずです。
もう一度正面を向いて、今度は骨盤を動かないように両手でしっかり押さえて振り向いてみてください。ほとんど振り向けないはず。その角度が実際に腰の捻れる角度です。
どうですか?体感できました?
胴体は思っているほども捻れないのです。
その理由は簡単で胴体には内臓が詰まっているから。動く度に内臓が捻られたら大変ですよね。
1軸でも2軸でもどっちでもいい!?
今までの話から、ランニングや水泳では動画や写真を見ると体幹部が捻れているように見えるのは実は肩甲骨と股関節の動きでそう見えているだけということが見えてきます。
トライアスロン界では1軸の動き、2軸の動きという議論がよくされますが、解剖学的に言えば背骨を軸として捻るという意味での1軸はありえません。
かといって2軸という表現も、股関節や肩甲骨の動きを無視して受け止めると体重をただ左右に乗せ替えるだけの非効率な動きになるように感じます。
本質的には軸がどうこうよりもまず、股関節と肩甲骨の動きをしっかり意識できるようになることが重要になるかなと。
それさえできれば、どちらの軸をイメージするかはあとは好みの問題であり、イメージしやすい方を使えばよいわけです。
ナチュラルで速い人達はどちらの軸の意識でも股関節と肩甲骨が上手く使えているから速いんじゃないかなと思います。
話がすこしずれてきましたが、とにかく腰は捻れないということをしっかり頭に入れてください。
胴体を捻ろうとしてはいけません。股関節を動かすというイメージを忘れないでくださいね!