前乗りとは?
初心者の方には前乗り後乗りと言われても意味が分からないと思うのでまずは用語の定義からいきましょう。
前乗りとはサドルの前の方(細い部分)に座るポジションになります。
体重はお尻(坐骨)ではなく股の間(会陰)で支えることになります。よく尿道と表現する人がいますが解剖学的には会陰というのが正しいです。ただ、尿道と言った方がすぐにイメージできる人が多いです。なぜでしょうね?
後乗りとは?
サドルの後方(幅の広い方)に座ります。こちらは坐骨で体重を支えることになります。
ロードバイクでは一般的なポジションになります。
両者の違いを図にすると下のようになります。前乗りで適切なポジションを出すと前傾がきつくなることが分かります。でも、実際には後乗りぐらい上半身が起きているのに前乗りになっている人も沢山いらっしゃるようです…
前乗り・後乗りのメリット・デメリット
前乗りのメリットは
- 深い前傾姿勢がつくれる→空気抵抗が減る
- 体重を使ったペダリングがやりやすい→大きなパワーを出しやすい
- DHバーがあれば上半身は楽
デメリットは
- 長時間は首がしんどくなる
- 会陰部(尿道)が痛くなる
→本気で乗っている時はペダルで体重をある程度支えているのでそれほどきつくはならない。ゆっくり走る時は× - フロント荷重になるのでハンドリングが悪くなる。
- DHバーが無いと腕がしんどい
- DHバーのセッティングによっては呼吸が苦しくなるかも
といったところでしょうか?
一方、後乗りのメリットは
- 坐骨で乗るのでおしりが痛くなりにくい
- ハンドル操作がやりやすい
- 首の負担が少なく、呼吸も楽
デメリットは
- 深い前傾をとるとお腹が苦しい
- 体重を使ったペダリングがどちらかというとやりにくい
という感じになると思います。集団走行で空気抵抗があまり気にならないロードレースでは安定感のある後乗りが基本になります。ロードバイクの基本ポジションとも言えるでしょう。
前乗りという話が出るのはタイムトライアルやトライアスロンなどDHバーを使うときだけと考えても差し支えないです。
前乗りの誤解
前乗りだと「太ももの前ばかり使うことになるからダメ」という話をたまに聞きますが、適切なポジションとペダリングができていればお尻まわりの筋肉を動員できます。また、体重も利用しやすくなるのでパワーを出すなら間違いなく前乗りの方が有利だと思います。
僕はロードバイクからトライアスロンに入ったので最初は完璧な後乗りポジションでした。
ただ、そのままでDHバーをつけるとどうにも乗りにくい。腹が苦しいし力は入りにくいし…
そう思いながら走りやすいポジションを探していくと自然と前乗りになりました。そしてバイクのタイムもアップ。その経験からもDHバーを使うなら前乗りをオススメしたいです。
では、なぜ前乗りではダメという話がでるのかというと、僕は前乗り=単純にサドルの前に乗ると思っている人が多いからではないかと考えています。
前乗りは本当は後乗りのポジションのままBBを中心にして前転しているポジションです。
この図からわかるように、前乗りにする場合は
- サドルの高さを上げる
- ハンドルを下げる
この2つがセットです。多くの場合、ハンドルを遠くにする(ステムを長くする)必要もあります。
そのことを理解せずに後乗りのポジションのままでサドルの前に乗ると、サドルが低すぎて上死点で膝が曲がり過ぎになります。
そうなると上死点での動きがスムーズにできない→ペダルを踏み始める位置が早くなる→太ももの前をよく使う…というペダリングになっていきます。
また、上半身が詰まった状態になり苦しくなりますし重心が後ろに残るので体重を利用したダイナミックなペダリングもやりにくくなります。
こうなると、苦しいだけのDHポジションになりますね。
ですので、前乗りは前転乗りだ!ということを頭に入れて前乗りポジションをつくればゴキゲンなポジションになりますよ。
ちなみに、前転という言葉は今は無きTriathlon Trip vol.2 の「旬を探る〜トライアスロンバイク」という記事でワイズロードの大塚さんが使っていました。これを読んだ時、「そうそう、そういう表現がピッタリ!」と腑に落ちたのでここでもその言葉を使わせてもらっています。
どちらが良いの?
ここまで読めばわかると思いますが、どちらが良い・悪いでは無く、状況に応じて変えるというのが正しい選択になると思います。
シンプルに書くとDHバーをメインに使うなら前乗り、そうでないなら後乗りですね。
ロードバイクが初めての方は安定感のある後乗りから始めることをオススメします。ロードバイクになれてきてレベルアップしたいと感じた時にDHバーの購入とセットで前乗りポジションを検討すればよいでしょう。
ただ、ロードレース用のフレームだとシートポストを変えないと前乗りポジションが作りにくいこともありますのでご注意を。前乗り用シートポストはプロファイルデザインから発売されています。
また、体が小さい人の場合はフレームの制約でステムを交換しないとハンドルを低くできないことも多々あります。そういう人はいわゆる水平または首下がりのステムを探す必要があります。これがまた種類が少ないので大変だったりします。
軽量化にこだわりが無いならチネリのピスタステムシリーズがオススメ。僕もこれを使うことで無理なくポジションをつくることができています。値段もアマゾンなら4千円切っているのでお財布にも優しいです。
ちなみに僕は前乗りでセッティングしていますが、のんびり走る時や急な坂をシッティングで登る時は後乗りのポジションをとることが多いです。この場合はサドルが高めになりペダリングは少しやりにくくなりますが許容範囲内かなとという感覚です。
このようにコース状況によっても前乗りと後乗りは使い分けるものだということも頭の片隅にいれておくとバイクが楽になりますよ。
余談ですが、そういう事情があるのでサドルはフィジークのアリオネのようなフラットで前後にポジションを変えられるタイプの方がオススメです。前乗り専用のサドルなどポジションが1つに決まってしまうサドルは、コース状況の変化に対応しにくいです。