ここでは、4つの練習区分をもう少し詳しくみてみましょう。
あなたの練習の目的によって区分を使い分けることが、効率の良いトレーニングへの第一歩です。
運動強度の決め方で心拍数を基準としてトレーニングの強度を下記の4つに分けました。
- 有酸素トレーニング(E1)
- LTトレーニング(E2)
- ATトレーニング(E3)
- 無酸素トレーニング(E4)
問題は、この4つをどのように選んでトレーニングメニューを組み立てていくかになります。
ここではその時に必要となる4つの練習区分の狙いやトレーニングになのか、どれぐらいの割合で組み合わせるのがよいか、ということを説明していきます。これがしっかり理解できればトレーニングメニューを自分でつくることができるようになると思います、多分・・・
有酸素トレーニング(E1)
これは強度が70%以下で行う練習になります。感覚的には喋りながらできるトレーニングです。
この強度でのトレーニングの目的は有酸素能力を鍛えるということです。具体的には
- 全身の毛細血管を発達させる
- 脂肪を使うエネルギー回路を鍛える
- 遅筋を鍛える
という感じです。
体力全体の底上げをするためのトレーニングだと考えてください。土台作りですね。この土台がどれだけできているかどうかで、その後にスピード練習(運動強度の高いトレーニング)をしたときの伸びしろが決まります。
一般的にはトライアスロンの年間トレーニングの6割ぐらいはこのレベルになります。
特に、運動経験ゼロからスタートする初心者の場合、8〜9割ぐらいをこのトレーニングに費やしても十分に速くなります。
また、初心者の場合ジョギングレベルでもこの心拍数を超える場合があります。もしそうなったら、残念ですが、あなたの体はジョギングできるレベルにはないということです。ショックを受けるかもしれませんが、冷静に受け止めてまずはウォーキングから始めてください。
体の反応を無視して走ると、ケガをしたり疲労で体調を崩したりする確率がとても高くなります。焦らずとも必ず走れるレベルにまで体は変化していきますからじっくり取り組みましょうね。
ちなみに、この強度のトレーニングの疲労から完全に回復するのには約12時間必要と言われています。
LTトレーニング(E2)
これは70〜85%程度の強度になり、「すこしキツイが気持ちよく体を動かせる」レベルです。レースで言うとミドル〜ロングのペースとなります。
このレベルのトレーニングは主にスタミナ作りが目的となり、脂肪と糖質の両方を使うエネルギー系を鍛えていきます。
目安として、全体のトレーニングの2~3割ぐらいをこのレベルで行います。ですのでトライアスロンのトレーニングではE1とE2のレベルでのトレーニングが8~9割を占めることになります。
このことから分かるように、トライアスロンでは完走が目的の場合はゼェハァいうトレーニングをする必要はほとんどありません。気持ちよいレベルまでの運動で十分です。
ですので、実はトライアスロンのトレーニングは楽なんですよ。
少し安心しましたか?(笑)
この強度でのトレーニングの疲労から完全に回復るるには12~24時間必要と言われています。
LTとはLactate Threshold(乳酸性作業閾値 )の略です。強度が低い運動では血中の乳酸濃度は一定に保たれますが、あるレベル以上の強度になると乳酸の分解が追いつかず血中濃度が上がってきます。そのポイントがLTとなります。
一昔前は「乳酸は疲労物質である」と言われていましたが、それは間違いであることが分かってきています。ただ、そこを詳しく話すと長くなるので、ここでは単純に「乳酸の濃度が疲労の指標になる」と考えておいてください。
そして、ここでのLTトレーニングという言葉は「乳酸が蓄積しない程度の強度でのトレーニング」という意味で使っています。
ATトレーニング(E3)
これは85〜90%の強度で行うトレーニングで、感覚的には「きついけど5分以上は頑張れる」というレベルになります。これはいわゆるしんどいトレーニングになります。
このレベルでのトレーニングの目的は
- 最大酸素摂取量のUP
- スピード持久力をつける
になります。一言でいえばスピードを付けるためのトレーニングで、当然体への負担も大きくなり、回復にも約24時間かかると言われています。このレベルのトレーニングは疲労が残りやすくケガやオーバートレーニングのリスクも高まります。毎日やるのはNGです。
ですので、成績をアップさせるためには必要なトレーニングですが、全体のトレーニングの中では1〜1.5割程度に比率になります。これ以上増やすことは危険だと考えてください。
また、E1とE2でしっかり土台を作っていない場合、E3には取り組むべきではありません。初心者で完走を目的とする場合、この強度のトレーニングにこだわる必要は全く無いです。
ただ、やればわかりますが、このレベルのトレーニングは「頑張った感」がとてもあり、練習後の充実感がとても高いです。また、短期間でグッとスピードがつくので「もっとやればもっと速くなるのでは・・・」という誘惑にも駆られます。
しかし、ここはグッとこらえて自分をコントロールしましょう。これもメンタルトレーニングの一つです。
ATとは Anaerobic Threshold( 無酸素性作業閾値)の略で議論がいろいろとありますがLTとほぼ同じです。乳酸濃度を基準として決めたATをLTと呼ぶというイメージです。
有酸素運動と無酸素運動の境目と意味し、この強度を越えると無酸素運動となり短時間でバテて動けなくなります。
ここでのATトレーニングは、「有酸素運動から無酸素運動に変わるレベルを把握し、そのレベル付近でトレーニング」という意味で使っています。
無酸素トレーニング(E4)
90〜100%の強度でおこなうトレーニングで、とてもキツイです。3分ももたないレベルの強度になります。いわゆる全力ダッシュという練習ですね。
このトレーニングの目的は
- スピード・パワーのUP
- 耐乳酸能力のアップ
- 最大酸素摂取量のUP
- フォーム作り(素早い動作の習得)
などがあります。
ガッツリやると体への負担が非常に大きく、完全に回復するには24〜72時間かかると言われています。
基本的に、トライアスロンではこのレベルのトレーニングをする必要性はほとんどありません。全体の0.5割程度の量にしておくのがよいと思います。
なぜ0としないのかというと、フォーム作りという目的で疲労がたまらないレベルで取り入れるのは有効だからです。具体的には
- 水泳なら25mダッシュ
- バイクなら10〜15秒程度のスプリント
- ランなら100mぐらいの流し走(ウィンドスプリント)
といった練習で、神経系のトレーニングという感覚です。
やればわかるのですが、E1やE2レベルのトレーニングばかりしていると速く動けなくなるんですね。神経が速い動きに対応できなくなるという感じです。それをリセットする意味で、たまにこういう練習を取り入れることは重要です。
まとめ
ここで説明した内容を頭に入れて、トレーニング計画を組むと効率よくトレーニングできると思います。
何度も書いていますが、トレーニング全体の80%はE1とE2レベルの楽な練習になります。初心者の人は「こんな楽で大丈夫?」と不安になるかもしれませんが、それでも十分に体力はつくので安心してください。